研究概要 |
分子生物学的手法によりATP受容体チャネルをアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させ,その構造と機能との関連を探究した.最終年度にあたる本年度では,ATPの結合に関わると予想される部位と,イオン・チャネル孔における薬物の作用について改変受容体を用いて検討を加えた.ATP受容体チャネルの7つのサブクラスにはきわめて保存性の高いグリシン残基が集中して存在する部位が細胞外領域に存在する.加水分解を伴わないATPの結合部位にはこのような構造が含まれる例があること,およびアデニンとチミンとの選択的結合からの推定より,このグリシン領域がATPの結合に関与することが予想された.そこで,この領域のグリシンをアラニンあるいはバリンという側鎖の大きな残基と置換したところ,247番目と248番目のグリシンに対する置換により,ATPに対する応答性が減弱もしくは消失した.以上のことから,この部位がATP結合に必須の役割を果たす可能性が示された.セロトニン,イミプランは電荷を有する薬物であり,アセチルコリン受容体チヤネルのチャネル孔に作用することが知られている.これらの化合物が同様の効果をATP受容体チャネルに対して示すか否かを検討した.セロトニンは正常型のP2X2受容体の活性に促進的に作用したが,チャネル孔にある種の改変を加えた受容体に対しては抑制効果示した.また,イミプラミンは正常型の受容体に対して抑制/促進の両作用を示したが,ある種の改変を加えた受容体に対しては抑制あるいは促進の一方のみを示した.以上のことから,これらの化合物がATP受容体のチャネル孔と標的として薬理作用を示す可能性が示唆された.
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