子嚢菌約150菌株についてのリンパ球幼若化に対する効果を指標とした検索で、免疫抑制活性を示したいくつかの菌から得られた活性成分中、Gelasinospora multiforisからのmultiforisin A(1)-FやDiplogelasinospora grovesiiからのmacrophin(2)は2-ビロン化合物である.本年度は、先の検索で活性を示した菌中、上述2菌に近縁のGelasinospora heterosporaやG.longisporaについて活性成分の単離を目指した.G.heterosporaからは、4種の活性成分が単離され、中3種は1の関連物質であって、新たに1と共にG.multiforisからも得られたのでmultiforisin G(3)、H(4)、I(5)と命名、残る1種はSordaria macro-sporaからのへキサケチドsordarial(6)に一致し、6の未定であった側鎖の絶対配置を決定した.G.longisporaからは5種の活性成分が得られ、それらは1、3-6に一致した.multiforisin A-I、それらの誘導体2種、及び2の合計12種の2-ビロン系化合物につき構造活性相関を検討し、a)3位にhydroxymethyl、5位にformyl基が存在するか、b)3位と5位のhydroxymethyl基中、どちらか一方か或いは双方がアセチル化されるかし、しかも、6位側鎖中に二重結合が存在して2-ビロン環と共役する場合に高い免疫抑制活性が発揮されることが判明した.1とほぼ等しい高い活性を示す2は、3位、6位の側鎖構造が1のそれとかなり異なるため、化学反応により誘導体を作製し構造活性相関を別途検討中である.免疫抑制剤FK-506はT細胞のインターロイキン2(IL-2)生産を阻害しリンパ球数を減少させ、IL-2を添加すると減少したリンパ球数は再び回復したが、3により減少しだリンパ球数はIL-2添加によって回復しなかったため、3の免疫抑制作用はIL-2生産阻害によるものではないと考えられた.他に、Gelasinospora santi-florii Microascus tardifaciensからの活性成分の構造を解明し、更に、他の数種の子嚢菌から活性成分を単離した.
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