子嚢菌約150菌株についてのマウス脾臓リンパ球幼若化に対する効果を指標とした免疫機能調節活性検索で、免疫抑制活性を示したいくつかの菌からそれぞれ活性成分を単離した。即ち、Gelasinospora multiforisから新2-ピロンmultiforisin A(1)-I(9)を、Gelasinospora kobiから新大環状セスタテルぺンkobiin(10)と新2-フラノンkobifuranone A(11)-C(13)を、Diplogelasinospora grovesiiからは Macrophoma commelinaeから得られていた2-ピロンmacrophin(14)、Colletotrichum capsiciやChaetomium funicolaから得られていた大環状ラクトンcolletodiol(15)及び15の立体異性体新化合物10-epi-colletodiol(16)を、Gelasinospora heterosporaからは7-9及びSordaria macrosporaから得られていたヘキサケチドsordarial(17)を、そして、Gelasinospora longisporaからは1、7-9、17をそれぞれ免疫抑制活性成分として単離した。 これら活性成分中、既知化合物であった14、15、17について免疫抑制活性が見出されたのは今回が初めてであり、17については未定であった側鎖の絶対配置を今回決定した。 今回得られた多数の免疫抑制活性成分中、2-ピロン化合物は1、14など比較的高い活性を有するものを含み、構造も比較的単純であるため、医薬品開発への先導化合物としての利用の可能性を考えて、1-9、それらの誘導体2種及び14の合計12種の2-ピロン化合物について構造活性相関を検討し、multiforisin類などの2-ピロン化合物の活性発現に必要な構造要因を解明した。又、免疫抑制剤FK506の作用発現様式との比較から、7の免疫抑制作用はインターロイキン2(IL-2)産生阻害によるものではないと推定した。その他、Gelasinospora santi-florilやMicroascus tardifaelensから各活性成分を単離して構造を解明し、更に、他の数種の子嚢菌からも活性成分を単離した。
|