研究概要 |
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に対する増殖抑制作用と、抗ヘルペス剤アシクロビル(ACV)及びガンシクロビル(GCV)の作用増強効果とを指標にして、200種類以上の天然物質や合成物質を評価した。その結果、植物由来の天然フラボノイドの一種である5,6,7-trimethoxyflavone(TMF)と、ジテルペンである(scopadul ci ol(SDC)及びponi ci din(PND)が、抗ウイルス活性とACV/GCV増強効果を有することが明らかになった。この内、TMFは、直接的なウイルス不活性化作用によって抗HSV-1作用を呈することと、ACVとの併用によって相乗効果を現すことがわかり、これらのデータを発表した(J.Antimicrobial Chemotherapy,1997)。SDCとPNDは、TMFに比べて強いACV/GCV増強効果を示した。そこで、この相乗作用のメカニズムを解明するため、ACV.GCVの活性化、つまりリン酸化に対するSDCとPNDの影響を検討した。この際に、HSV-1由来のリン酸化酵素であるチミジンキナーゼ(HSV-TK)のWestern blottingによる定量や、放射活性物質の取り込み実験によるHSV-TK酵素活性の測定、活性型代謝産物(ACV-TP,GCV-TP)のHPLCによる定量の各条件を検討した。これらの測定結果から、SDCとPNDは、HSV-TKの合成には影響を及ぼさず、一方、宿主由来のキナーゼ活性ではなくHSV-TK活性を選択的に活性化することがわかった。さらに、HSV-1感染細胞内において、SDC/PNDとACV/GCVとの併用によってACV-TP,GCV-TP量が有意に増加することが明らかになった。以上の結果から、HSV-TK geneを自殺遺伝子として利用する癌遺伝子治療の効果を高めるために、SDC/PNDを利用できる可能性が確認された。この点を評価するため、HSV-1 TK geneを発現ベクターにクローニングし、種々のヒト由来癌細胞株にトランスフェクションした。現在、この系を用いて、細胞毒性を検討している。
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