研究概要 |
抗ヘルペス治療薬であるアシクロビル(ACV)とガンシクロビル(GCV)の単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に対する増殖抑制効果を指標にして、相乗作用を示す物質を検索してきた。その結果、現在までのところ、植物から得られた3種類の化合物に強い作用が認められた。つまり、Callicarpa japonicaから単離した5,6,7-trimethoxyflavoneは、HSV-1増殖阻害効果を有し、ACVと併用することによって相乗的な抗HSV-1作用がみられた。また、Rabdosia ternifoliaに由来するジテルペノイドの一種であるポニシジン(PND)は、ACVとGCVの両者と相乗効果を示した。PNDは、宿主細胞由来のキナーゼではなくHSV-1特異的チミジンキナーゼ(TK)を選択的に活性化することがわかった。そこで、HSV-1 TK遺伝子をヒト癌細胞に取り込ませてTKを発現させた上でPND処理を行ったところ、ACV及びGCVによって生じる細胞死滅効果がPNDの併用時に顕著に高まった。実験動物(マウス)にPNDを投与して、経時的にその生物活性を評価した結果、この物質は比較的長時間にわたって活性を維持することが明らかになった。もう一つの化合物であるscopadulciol(SDC)は、Scoparia dulcisから分離されたジテルペノイドである。SDCも、ACV、GCVの両薬剤の抗HSV-1作用を増強し、HSV TK発現細胞に対するACV及びGCVの毒性を強めた。これらのデータから、今回得られたSDCとPNDは、ACVやGCVと併用することによって、これらの薬物の抗ウイルス作用の増強が期待できるだけでなく、HSV TK/GCV投与系を利用する癌遺伝子治療においても高い癌細胞排除効果を達成しうると思われる。
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