角質層のバリヤ-機能のため著しく透過性の低いイオン解離する弱電解質薬物の経皮治療システムの開発を目的として、新規に合成した四級アンモニウム構造を有する一連のグリセリド誘導体(7種)(以下YKS)を用い、その物理化学的性質、生分解性、皮膚透過性について評価を行った。1.pH安定性試験から、YKSは弱酸性条件下では分解は顕著に抑制され、角質層中では安定に存在し、生きた表皮以下の組織への拡散にともない代謝酵素の作用も加わり生体成分及び類似成分に加水分解される生分解性カウンターイオンであることが示唆された。白色家兎を用いた皮膚時刺激性試験の結果、YKSの刺激性は弱くAzoneと比較した場合(3%)、一次刺激指数も小さく回復性の点でも優れていることが示された。pH安定性、低刺激性の点から安全性の高いカウンターイオンであると考えられた。2.アニオン性モデル薬物として使用したクロモグリク酸(以下SCG)のみかけ分配数はYKS共存下で、イオン対形成により著しく増加し、SCGの脂溶性の調節が可能であることが明らかとなった。3.SCGのラット皮膚に対する透過性は、YKS共存により促進されたが透過のラグタイムが変化しないことからイオン対形成による角質層/基剤間分配係数の増加に起因することが判明した。4.YKSの皮膚前処置により、SCGの累積性透過量はYKSの濃度依存的に増加したが、ラグタイムが減少したことからその促進作用は皮膚内拡散性改善に起因することが判明した。5.イオン対と前処置との組み合わせにより、透過速度で約33倍、透過係数で約189倍もの著しい促進効果が認められ、イオン対と前処置との組み合わせが有用であることが判明した。現在、イオン対の溶解度の高い親油性基剤を使用しin vivoラット皮膚透過実験を行いその有用性について検討中である。
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