研究概要 |
ピリドキサールモデル化合物を用いる非天然型アミノ酸及びそれらを含むペプチド類の高効率的合成法の確立を目的として、1)アミノ酸のα位アルキル化反応および2)セリン水酸基の置換反応(β-置換反応)についてアミノ酸エステル及びペプチドレベルでの検討を行い、以下の成果を得た。 1)キラルなイオノホア側鎖を有するピリドキサール誘導体、あるいはアンサ型構造とイオノホア側鎖を有するピリドキサール誘導体を用いることにより、アミノ酸エステル類の不斉α-アルキル化反応が進行し、光学活性α,α-ジアルキルアミノ酸エステルが高立体選択的に得られることを見出した。本反応の立体選択性は系内の金属イオンの種類に依存し、イオノホア側鎖と金属イオンとのキレーションが立体選択性発現において非常に重要であることが明らかとなった。また本反応はペプチドのN末端位においても位置特異的に進行し、ペプチドの位置及び立体選択的なアルキル化による、非天然型ペプチドの直接的合成法になることを明らかにした。 2)分子内にイオノホア側鎖に加えて、イミダゾール残基やメチルチオ基を有するピリドキサールモデル化合物を合成し、セリン誘導体のβ-置換反応に適応したところ、リチウムイオン存在下でメルカプタン類との置換反応が触媒的に進行し、各種S-置換システイン誘導体が高収率で得られることを見出した。またリチウムイオン、亜鉛イオンの共存下、ニトロ酢酸エステルのような炭素求核体にによる置換反応も進行することが明らかとなった。さらにメルカプタン類による置換反応は、N末端にセリン残基を有するペプチド類においても進行し、N末端セリン残基を触媒的かつ直接的に各種S-置換システイン残基に変換できることを見出した。今後、不斉反応へと展開して行くため、現在新たに光学活性シクロファン型構造を有するピリドキサール誘導体の合成を行っている。
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