局所適用製剤のモデルとして、経眼適用製剤を選び、薬物吸収挙動をあらわせる普遍的な数学的モデルを構築することを試みた。このモデルにより、局所適用製剤の合理的な製剤設計、処方設計ができるとともに、各種製剤を同一に評価することができ、薬物治療の適正化において有用性が高い。 既に、前年、経眼投与後の薬物挙動を予測するため、拡散方程式(遅い移行)とコンパートメントモデル(速い移行)を結合させた、新規数学モデルを構築した。そこで、このモデルの妥当性を検討するため、涙液分泌が減少した麻酔下の家兎を用い、薬物点眼後の眼内濃度を測定し、数学的モデルの推測値と比較した。その結果、極めて良い一致が得られ、モデルとパラメーターの有用性が証明された。 さらに、モデルの応用性を検討するため、新たに薬物の高分子粘性点眼剤を開発し、家兎に経眼投与後薬物の眼内濃度を測定し、数学的モデルの推測値と比較した。涙液中薬物濃度推移から数学的モデルを用いて推測した値と実測値は良い一致が得られ、モデルとパラメーターを新規製剤に応用できることが証明された。この数学的モデルでは、薬物の涙液中濃度、角膜中濃度、眼房水中濃度などを推測することができる。 次に、数学的モデルのパラメーターに及ぼす因子を検討した。脂溶性の異なるβ遮断薬および分子量の異なる水溶性薬部tを家兎に点眼投与し、涙液中薬物動態を解析した結果、脂溶性および分子量は、点眼投与後の涙液中薬物動態にはあまり影響を及ぼさないことが明らかとなった。このことから涙液中からの薬物消失には、涙液のターンオーバーが主に関与してることが示された。一方、種々の水溶性薬物やβ遮断薬を眼内へ注入後の眼房水中薬物濃度推移を測定した結果、眼房水のターンオーバーによる消失とは別に、薬物の脂溶性に影響される消失経路があることが明らかとなった。
|