眼科領域における薬物動態機構の解析と薬物治療の適正化

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09672283
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 佐々木 均 長崎大学, 医学部・附属病院, 助教授 (00170689)
• 研究分担者: 中嶋 幹郎 長崎大学, 医学部・附属病院, 助手 (00260737)
• キーワード: 眼 / 薬物送達 / 薬物治療 / 膜透過 / 速度論 / 拡散 / 薬物動態 / 適正化

研究概要

局所適用製剤のモデルとして、経眼適用製剤を選び、薬物吸収挙動をあらわせる普遍的な数学的モデルを構築することを試みた。このモデルにより、局所適用製剤の合理的な製剤設計、処方設計ができるとともに、各種製剤を同一に評価することができ、薬物治療の適正化において有用性が高い。
既に、前年、経眼投与後の薬物挙動を予測するため、拡散方程式(遅い移行〉とコンパートメントモデル(速い移行)を結合させた、新規数学モデルを構築した。このモデルの妥当性を検討するため、涙液分泌が減少した麻酔下の家兎や、高分子粘性点眼剤を用い、薬液点眼後の眼内濃度を測定し、数学的モデルの推測値と比較した。その結果、極めて良い一致が得られ、モデルとパラメーターの有用性が証明された。また、脂溶性の異なるβ遮断薬および分子量の異なる水溶性薬物を家兎に点眼投与し、涙液中薬物動態を解析しパラメータに影響する因子を検討した。
今年はさらに、薬物放出挙動を制御した高分子結膜挿入剤を作成し、家兎の眼に適用し、涙液中薬物濃度、眼内薬物濃度、血液中薬物濃度を測定し、前年度得られた数学的モデルで、同様にその有用性を評価した。挿入剤からの放出は0次速度で行われ、モデルの改良により薬物動態を推測することが可能であった。また、吸収促進剤を含有した製剤と眼科用脂溶性プロドラッグを含有した製剤を作成し、家兎の眼に適用後、涙液中薬物濃度、眼内薬物濃度、血液中薬物濃度を測定し、前年度得られた数学的モデルで解析した。その結果、薬物の角膜における分配と拡散が増加することを数学的に明かにした。
以上の結果を整理して、薬物の眼内移行性と全身移行性に及ぼす各種製剤の特徴を明らかにし、眼科領域における各種製剤の適正な使用法のための指針とした。

研究成果

• [文献書誌] Hitoshi Sasaki et al.佐々木均: "Enhancement of ocular drug penetration"Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems. 16. 85-146 (1999)
• [文献書誌] Mikiro Nakashima et al.中嶋幹郎:: "In vitro characteristics and in vivo plasma disposition of cis-platin conjugated with oxidized and dicarboxymethylated dextrans"Biological & Pharmaceutical Bulletin. 22. 756-761 (1999)
• [文献書誌] Renzo Yamamura et al.佐々木均: "Characterization of ocular pharmacokinetics of beta-blockers using a diffusion model after instillation"Pharmaceutical Research. 16. 1596-1601 (1999)
• [文献書誌] Hitoshi Sasaki et al.佐々木均:: "Drug absorption behavior after periocular injections"Blological & Pharmaceutical Bulletin. 22. 956-960 (1999)
• [文献書誌] Hitoshi Sasaki et al.佐々木均:: "Topical delivery system of ophthalmic drugs by periocular injection with viscous solutlon"Blological & Pharmaceutical Bulletin. 22. 961-965 (1999)
• [文献書誌] Hitoshi Sasaki et al.佐々木均:: "Characterization of ocular pharmacokinetics of tilisolol after instillation into anesthetized rabbits"Blological & Pharmaceutical Bulletin. 22. 1253-1255 (1999)