局所適用製剤のモデルとして、経眼適用製剤を選び、薬物吸収挙動をあらわせる普遍的な数学的モデルを構築することを試みた。 (1) 家兎の摘出眼粘膜における各種薬物の膜透過機構を、拡散チャンバーを用いたin vitro系の実験で詳細に解析した。その結果、眼粘膜の薬物透過パターンは拡散方程式であらわすことができた。 (2) 種々の薬物を家兎に点眼した時の涙液中薬物動態および、眼房水中に薬物を注入した時の房水中薬物動態を数学的に解析し、薬物の脂溶性や分子量の影響を明らかにした。 (3) これらの結果を元に、薬物点眼時の薬物動態を予測するため、拡散方程式(遅い移行)とコンパートメントモデル(速い移行)を結合させた、新規数学を構築した。涙液分泌が減少した麻酔下の家兎に薬液を点眼し、眼内濃度を測定し、数学的モデルの推測値と比較した。その結果、極めて良い一致が得られ、このモデルの妥当性が確認された。 (4) 構築した数学的モデルの応用拡大を目的に、高分子粘性製剤、高分子結膜挿入剤、脂溶性プロドラッグ、吸収促進製剤を作成し、家兎に経眼適用後の薬物挙動を数学モデルで解析した。改良した数学的モデルを用いることにより、高分子粘性製剤および高分子結膜挿入剤を適用後の薬物動態を推測することが可能であった。また、数学的モデルを用いて、脂溶性プロドラッグおよび吸収促進製剤適用後の薬物のみかけの角膜透過定数を算出できた。 (5) ヒトにおける文献値を用い、ヒトにおける数学的モデルおよびパラメーターを算出した。 このモデルとパラメーターは、局所適用製剤の合理的な製剤設計や眼科領域における薬物治療の適正化において有用性が高い。
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