研究概要 |
ポリアミンアナログの合成:これまでに合成報告例のない構造類似体(不飽和結合を有するもの,高級なアルキル鎖を有するポリアミンなど)および機能性分子の出発物質となり得る化合物(5-カルボキシポリアミン等)を合成した.それらの一部は,NMDA受容体に対するポリアミンのモジュレーターとしての解析に応用し,N,N′,N″-tribenzylnorspermidineなどの化合物がNMDA受容体チャネルの阻害剤であり,そのチャネル構造の解析に有用であることを示した. 機能性ポリアミンアナログの合成と応用:ポリアミン構造に光感受性の官能基(アジト基など),ビオチンなどを導入した機能性標識分子を合成した.末端に一級アミノ基をもつビオチン標識ポリアミンは組織トランスグルタミナーゼの基質にり,報告のあるビオチンアミドペンタミンよりも効率よくジメチルカゼインを標識し得ることがわかった.また,化合物をラット肝がん由来HTC細胞に投与すると、ポリアミン構造に特異的に標識される蛋白を検出し,合成したアナログがポリアミン作用蛋白の検出に有用であることが示唆された.アジト安息香酸およびビオチンを導入した化合物を用いて,細胞表面の蛋白の光標識を試みると,スペルミジンの共存で標識が阻害される分子量10万の蛋白を検出した. ポリアミンの枯渇,過剰により変動するたん白の検出と解析:オルニチン脱炭酸酵素阻害剤(AOAPなど)によ前処理とスペルミジンの添加で,ポリアミンを過剰蓄積したHTC細胞の蛋白成分の変化を調べたところ,細胞死に先立ってヒストン分解が観察され,セリンプロテアーゼ阻害剤によって細胞死が一部抑制されることがわかった.現在,ヒストン分解と細胞死との関連を追跡中である.
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