機能性ポリアミンアナログの合成および細胞内ポリアミン作用蛋白質の検出:ビオチン標識ポリアミンを系統的に合成し、ラット肝がん由来HTC細胞に投与したところ、ポリアミン構造特異的にビオチン標識される蛋白質が存在することを明らかにした。ビオチン標識ポリアミンを用いる組織トランスグルタミナーゼの活性測定法を確立し、ポリアミンアナログの基質性を調べTgaseの活性部位構造を推察した。合成したビオチンおよびアジド基を持つ二機能性アナログが、細胞膜上のポリアミン親和性蛋白質の光標識に有用であることを示した。蛍光標識ポリアミンを用いてアルギニルトランシフェラーゼの人工基質を合成し、活性測定法を開発した。 ポリアミンの枯渇あるいは蓄積により影響を受ける細胞機能の解析:ポリアミン合成阻害剤により比較的長期間処理し、ポリアミン欠乏状態にしたHTC細胞は、投与したスペルミジンを過剰に蓄積しアポトーシス様の細胞死に至る。この細胞死の原因を探るために細胞死に伴い変化する蛋白質を検索し、細胞死に先立ちヒストンが分解されることを観察した。この分解および細胞死はセリンプロテアーゼ阻害剤により一部抑制され、ポリアミン蓄積による細胞死にヒストン分解が関与することが示唆された。ポリアミン蓄積時の遊離ピリアミン濃度の測定を目指して、細胞液をコーンオイル中で限外ろ過する方法を考察し、ろ液中のポリアミン濃度が遊離濃度の指標になりうることを示した。その際、ポリアミン欠乏状態および過剰蓄積状態の細胞では細胞容積が変化することを明らかにした。また、分離操作を必要としない質量分析を利用する生理的ポリアミンの測定法を新規に開発した。 ポリアミンアナログの合成とその作用についての検討:長鎖ポリアミンを含むポリアミンアナログを合成し、NMDA受容体、DNAトリプルへリックス形成などへの影響を検討した。
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