研究概要 |
点滴注射剤に代わる製剤または投与方法として,昨年度に引き統きelectroporation(電気穿孔法:EP)の有用性に関して検討し,以下に示す結果を得た. EPの皮膚透過促進メカニズムを,EPの適用条件と皮膚透過促進の関係,およびEP負荷時の皮膚中電場強度と皮膚透過促進の関係から評価した.なお,モデル薬物には安息香酸ナトリウムを選択した.まず,needle状電極2本を皮膚表面に設置し,種々電圧を負荷して皮膚透過性を測定した.その結果,電場強度と薬物透過量は比例した.そこで,適用部位内の電場強度を二次元解析により調査したところ,薬物透過は高電場部分で高く低電場部分では低いことが判明した.また,高電場部分では皮膚刺激などの障害が認められた.このことから,皮膚障害を回避して必要な皮膚透過促進効果を得るには適用部位全体に均一な電場強度を形成すればよいことが示唆された. また,皮膚上にring状電極1個とその中心にneedle電極1本を設置して同様の検討を行った.電場勾配はneedle電極付近で急でring電極付近では緩やかであった.したがってこの形状の電極を用いる場合,needle電極と反対の電荷を持つ薬物は適用部位の中でも特に高電場を形成するneedle電極付近に集中するため,皮膚透過促進効果がより大きくなると考えられた. さらに,EP適用時の電極と皮膚表面の距離および薬物適用に用いる溶媒の影響を三次元電場解析と皮膚透過促進効果の関係から評価した.その結果,皮膚上の平均電場強度は皮膚と電極の距離のみならずパルス波形によっても影響を受けることが明らかとなった.したがって,これらを総合的に評価することにより,皮膚透過促進効果を制御できることが示唆された.
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