ブレオマイシンや最近注目されている非常に高い制がん活性を示すエン-ジイン系抗生物質は、高頻度でDNA二本鎖を切断することによりその生物活性を発現することが判明している。この様な背景のもと、我々は新しい制がん剤の開発の面からも重要と考えられるDNAの二本鎖切断機能を有する化合物を種々分子設計をし、それらの化合物のDNA二本鎖切断活性と制がん活性および発がん性(変異原性)との相関関係を検討するため、新しいタイプの高効率DNA二本鎖切断能を有する分子を設計した。我々はすでに基礎化合物として、光感応ソラレン分子結合ブレオマイシン金属錯体1を設計し合成した。しかしながら1はDNAに対する切断活性はあるが、期待されたほど高い二本鎖切断活性は得られなかった。そこで本研究課題では、更に高い活性能を有したモデル分子を開発するため、本年度はモデル分子1の二本鎖切断活性を高める目的で、主として切断分子の改良としてピリジン核に電子供与基methoxyl基を導入したモデル分子2を合成した。このモデル分子2は、プラスミドDNAにたいし、非常に高い二本鎖切断活性を有していることが判明した。これらの成果については第8回金属の関与する生体関連をシンポジウムで発表予定。次年度は本モデル分子2の生物活性を、がん細胞を用いてその細胞毒性やアポトーシス等種々検討する予定である。
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