研究概要 |
ポリエチレングリコール(PEG)は毒性、抗原性が低く、また極性溶媒にも、非極性溶媒にも溶け、優れたドラッグキャリヤーとしての性質を有している。しかしPEGは官能基として両端に水酸基をもつだけであり、PEGとのハイブリッド体をつくろうとすると両端に同じものをエステル結合などで導入して作るしかない。PEGそのものでは、2種以上のペプチドの担体としては使えない。すなわちPEGの両端に同じペプチド(単機能)が導入されたハイブリッド体しか得られない。我々は1種類のペプチドとPEGとのハイブリッド体を合成して、ペプチドの生理活性の増強と持続性の発現という好結果を得た。即ち高分子PEGが小分子ペプチドの活性を損なうこと無く、逆に活性増強と持続性を生むことを見いだした。さらに研究を進め、数種類の生理活性ペプチド(多機能)とPEGとの多機能機型ハイブリッドを合成してその生理活性を検討しようとしたのが今回の研究である。多機能機型PEGハイブリッドの合成の為、まずアミノ酸型PEG(aaPEG)の合成を検討した。次いでフィブロネクチンやラミニンの活性部位をaaPEGを介したハイブリッド体(RGD-aaPEG-EILDV, PDSGR-aaPEG-YIGSR)を合成し、それらのガン転移抑制効果を測定した。aaPEGはペプチドの活性を抑えることなく、単にペプチドを混ぜ合わせるよりも好結果をえた。現在フィブロネクチンのRGDとその協働部位を持つ2機能性PEGハイブリッドを合成中であるが、中間成績では好結果を得ている。またラミニンγ鎖関連のPEGハイブリッド体の合成も続行中である。更に3機能性体の合成を検討中であり、高分子担体としてキトサンも検討中である。
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