研究概要 |
β-イオノン鉄カルボニル錯体の9位のメチル基を種々の置換基に変えたアナログ化合物の合成法を(2E)-(2,6,6-trimethylcyclohexen-1-yl)-2-propenoic acidを原料として3つのルートにより検討し、β-イオノンアナログ鉄カルボニル錯体の収率の良い一般合成法を確立することができた。このアナログのうち、9位がエチル基とイソプロピル基のものを11Z-レチナールへと誘導した。即ち、まずアセトニトリルのリチウム塩と反応後、DIBAL、還元しβ-イオニリデンアセトアルデヒドアナログ鉄カルボニル錯体を得た。続いてトリメチルシリル酢酸エチルとのPetertson反応を行うとオレフィン成績体のZ-体を優先的に与え、スズ試薬との反応によりメチルケトン体としたが、収率が低いことから別途合成法を検討した。その結果、エステル基をN-メトキシメチルアミド基に変換後、メチルリチウムを反応させると収率よくケトン体が得られることが判明した。続いて、C2-ホスホネートによる側鎖の延長、鉄カルボニル部の除去、官能基変換によりレチナールアナログを得ることができた。 これら合成した11Z-レチナールアナログは、ウシオプシンと結合し新たなロドプシンアナログを与えた。エチル基の場合は、分光学的に天然のものとほとんど同じであった。一方、イソプロピル体は、昨年度のフェニル体の時と同様、その立体的嵩高さのため結合しないと予想されたが、取り込み速度は非常に遅くなるもののオプシンと結合し、アナログ色素を与えることが判明した。現在、9位のポケット部分の大きさを検討するため、9位置換基を更に大きくしたレチナールアナログを合成している。
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