研究概要 |
β-イオノン鉄カルボニル錯体の9位のメチル基を種々の置換基に変えたアナログ化合物の合成法を(2E)-(2,6,6-trimethylcyclohexen-1-yl)-2-propenoic acidを原料として3つのルートにより検討し、β-イオノンアナログ鉄カルボニル錯体の収率良い一般合成法を確立することができた。続いて,これらを我々の開発した方法により,11Z-レチナールの9位メチル基をエチル,イソプロピル,イソブチル,t-ブチル,フェニル,ベンジル基,p-メトキシベンジル,1-ナフチルメチル,2-ナフチルメチル,3-インドリルメチルのものに変えた、11Z-レチナールアナログヘと収率よく変換することができた. 次に,これらのアナログとウシオプシンとの結合実験を行ったところ,置換基がフェニル,1-ナフチルメチル,t-ブチルの場合には,アナログ色素が形成されないのに対して,その他のものではいずれも,結合能は異なるがロドプシンアナログ色素を与えた.発色団であるレチナールアナログとアポタンパクとの相互作用の度合いを示す指標であるオプシンシフト値やアナログ色素の吸収極大をロドプシンの場合と比較すると,置換基がエチル基の場合に最も近い値を示し,このアナログの発色団のコンホメーションが,レチナールとほぼ同様になっているものと推測された.イソプロピル基の場合,ロドプシンより大きなオプシンシフト値を示した.続いて,新たに形成したアナログ色素の中から,9位がイソプロピル基とベンジル基のものについてシグナル伝達活性を測定したところ,いづれもレチナールに比べ約70から80%の活性を示した.このことから,9位に少なくとも水素を一個有する置換基の場合には,天然ロドプシンと比較して,かなりのシグナル伝達活性を示すこと,またこの際には置換基の大きさによる相違はあまり見られないことが示唆された.
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