研究概要 |
本年度はアミノ酸性神経伝達物質が関与する神経伝達機構を解明するために,二つのタイプのアミノ酸類の効率的合成を検討した.すなわち興奮性アミノ酸のうちグルタミン酸及びアスパラギン酸構造を分子内に有する環状アミノ酸類としてカイノイド類の一般合成法を開発した.また環状構造を有するβ-アミノ酸類の新規な一般合成法も開発した. (1)チイルラジカル付加・閉環反応の開発とカイニン酸類の不斉合成 安価で入手しやすい光学活性アミノ酸D-セリン及びS-グリシドールから両端にジエン構造を有するキラルな基質を調製後,それらのラジカル閉環反応を検討した.その結果,安価で低毒性なチオフェノールを用いるチイルラジカルの付加・閉環反応を新たに開発した.本反応は隣接位が官能基化された閉環体を高収率で与えることからこれまでのイオン的閉環反応を凌ぐ利点がある.本閉環反応を鍵反応とした(+)-α-allokainic acidの不斉合成にも成功した.また本ラジカル反応の機能性を更に高めたチイルラジカル付加・閉環・脱離反応も開発し,触媒量のチオフェノールでも閉環反応が効率的に進行することを見いだした.本反応を鍵反応とした(-)-α-kainic acidの不斉合成にも成功した. (2)環状β-アミノ酸類の新規合成法の開発 β-アミノ酸類の中でも環状構造を有するものが最近特に注目され,それらの大量供給法の開発が望まれている.そこで本年度は炭素,窒素または酸素原子で連結されたオレフィンとイミン誘導体間のチイルラジカルの付加・閉環反応を検討した.その結果,本ラジカル閉環反応がアミノ基及びカルボキシル基に変換可能なフェニルチオメチル基を隣接位に有する環状化合物の新規な効率的合成法になることを見いだした.
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