研究概要 |
昨年度に引き続き,三つのタイプの環状アミノ酸類の効率的合成を検討した. 1. チイルラジカル付加・閉環・脱離反応によるカイニン酸類の合 D-serine及びS-glycidolからフェニルチオメチル基で置換されたジエン体のチイルラジカル付加・閉環・脱離反応を検討した.その結果,チイルラジカルが末端オレフィンに付加後,生成した炭素ラジカルがフェニルチオメチル基で置換されたオレフィンを攻撃し,閉環すると同時にフェニルチオ基が脱離しながらオレフィンの異性化が進行した環状化合物が高収率で得られた.本反応は触媒量のチオフェノール存在下でも高収率で進行し,(-)-α-カイニン酸の効率的合成が実現した. 2. 環状βーアミノ酸類の新規合成法の 炭素,窒素または酸素原子で連結されたオレフィンとイミン誘導体のチイルラジカル付加・閉環反応の至適条件を検討した.その結果,イミン部分がオキシムエーテルまたはヒドラゾンのいずれの場合も付加・閉環反応が進行し,隣接位が官能基化された5員環化合物が高収率で合成できた.両官能基をそれぞれアミノ基及びカルボキシル基へ変換し,炭素環状及びヘテロ環状βーアミノ酸類合成の基礎的研究を行った. 3. オキシムエーテルのラジカル閉環反応を基盤とする環状アミノ酸類の合成研究 ホルミル基とオキシムエーテル基が窒素で連結された基質をL-Aspartic acidから調製し,そのスズラジカル付加・閉環反応により,水酸基とアミノ基を有するピペリジン化合物を一挙に構築した.その後,官能基変換によりneuraminidase阻害活性を示すアミノ酸類を合成した.
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