C型慢性肝炎の発症から病期の進行や合併症の併発を経て最後には死にいたる自然経過を、Markov Modelを用いてコンピュータ上にモデル化し、インターフェロン療法が加えられたときの費用効果分析を行った.その際に、日本の診療方式に則って作成したモデルとアメリカのそれとを比較して、国情の違いからくる分析結果の解釈上の問題を明確にした.本研究では、インターフェロン療法の効果を肝機能障害の改善や肝炎ウイルスの除去という直接効果だけでなく、余命延長とQOL改善の視点から評価し、また、費用分析の結果はアメリカのDRG償還額および日本の診療報酬支払点数を用いて比較した. C型慢性肝炎の治療モデルは効果分析、つまり余命の予測にはそのまま日本とアメリカの診療方式に適用できた.そのとき、日米差が大きいと言われる肝癌への進行率や肝癌の死亡率は費用効果分析に影響はほとんどなかった.費用分析の結果では、35才の軽症C型慢性肝炎患者の生涯の臨床経過を考えたとき、入院や外来の一回の医療費はアメリカと比べて安くとも生涯医療費になるとむしろ高額になるという結果であった.これは山口大学病院における肝臓病専門班の診療方式の結果であり、これをもって日本の標準的診療とするわけにはいかないが、外来受診頻度の多さは生涯医療費を押し上げる要因になり、入念な経過観察をすることの臨床的意義と患者の効用を明らかにする必要がある.生涯医療費の内訳は、日本では肝細胞癌に21%、アメリカでは肝移植に25%が費やされていたが、余命への寄与はわずかでしかなかった.インターフェロン療法には、日本では47%、アメリカでは30%が費やされていたが、費用対効果は優れているということができる.
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