研究概要 |
C型慢性肝炎の自然経過をマルコフ過程によりモデル化し、インターフェロン療法と従来の治療法とを比較して生涯の医療経費と余命の予測値を求め、日米の比較を行った.対象は35才軽症C型慢性肝炎の患者である. モデルの構造:アメリカの診療方式に基づいて作成したモデル構造は日本の肝臓病専門医から見ても妥当と考えられ、有意な違いをみとめたのは遷移確率であった. 効果分析:インターフェロン投与群および非投与群の平均期待余命は35.6年おおび33.1年であり、インターフェロン療法により2.5年の余命延長が期待された. 費用分析:外来および入院の受診頻度、在院日数、直接医療費、等から年間医療費に換算してモデルに当てはめた.生涯医療費(割引率5%)は投与群と非投与群でそれぞれ218万円および161万円、一方、アメリカDRG償還額では\8545および\893であった. 費用効果分析:費用対効果を治療によって余命を一年間延長させるのに必要な医療経費で捉えると、119万円/年つまり\5,537/年(120円/\.購買力平価1.8)相当であり、アメリカモデルの\l,223/年と比べて高額となった. 費用対効果の明細:平均期待余命の内訳に日米差を認めなかった.一方、入院や外来の一回の医療費はアメリカと比べて安くとも生涯医療費になるとむしろ高額になった.生涯医療費の内訳は、日本では肝細胞癌に21%、アメリカでは肝移植に25%が費やされていたが、余命への寄与はわずかでしかなかった.インターフェロン療法には、日本では47%、アメリカでは30%が費やされていたが、費用対効果は優れていた.これらの研究結果により、外来受診頻度の多さは生涯医療費を押し上げる要因になることが明らかになり、入念な経過観察をすることの臨床的意義と患者の効用を明らかにする必要がある.
|