昨年12月、精神保健福祉士法が制定され、来年度からは我が国の精神保健福祉サービスは今後大きく進展すると思われる。しかし、現状では、精神障害者の長期入院やいわゆる社会的入院の問題等が指摘されており、精神障害者の社会復帰の促進、とりわけ就労支援サービスの心理・社会的支援及び職域の開発は整備はまだまだ遅れている。 本研究では、今年度は全国8カ所の精神科社会復帰訓練並びに、精神障害者の社会復帰に関する相談援助を行っている民間機関と公的機関の現状について実地調査した。 その調査では当該施設において就労を希望する精神障害者の相談に応じ、かつ、各種給付制度、税の減免措置等の経済的支援や、社会復帰訓練施設等の社会資源に関する知識を提供できていることを前提にしたが、精神障害者自身の社会復帰に向けた自助努力を支援するような系統的なプログラムは制度的な限界もあって存在しなかった。精神障害者の求めに応じて、就労活動に活用可能な様々な選択肢を提供することが重要であり、そのためには、以下のような対応が今後検討を要すると思われる。 1.精神障害者の精神疾患の状態及び治療状況、支援者との関係に配慮しつつ、社会復帰への動機付けが高まるような自助グループなどの情報提供を行う。 2.精神障害者の社会復帰を支援するためには、相談に応じるだけでなく、どのような制度を利用することがその人にとって有益であるのかを含めて説明する。 3.精神障害者に対する日常生活への適応のために必要な訓練を集団的な安全感を保ちつつ行うこと。
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