98年度の研究目標は、 1. 精神障害者の精神疾患の状態及び治療状況、支援者との関係に配慮しつつ、社会復帰への動機付けが高まるような自助グループなどの情報提供を行い、 2. 精神障害者の社会復帰を支援するためには、相談に応じるだけでなく、どのような制度を利用することがその人にとって有益であるのかを含めて説明できているか、 3. 精神障害者に対する日常生活への適応のために必要な訓練を集団的な安全感を保ちつつ行うことが、我が国の精神障害者の就労支援プロセスにどの程度に実現されているのかを検討することであった。1.については、全国の先駆的な取り組みを行っている精神科病院及び地域サービス機関(公的・民間)への現地調査と患者インタビューを行った結果、医療段階とリハビリテーション段階ではかなり大きな乖離が生じていることが明らかになり、相互の情報提供システム以前の状況であることがわかった。2.については第一線のスタッフの中には公的サービスについては熟知しているものの民間サービスの現状についてはほとんど理解されず、また、そのようなサービスが相互に提供されるような情報ネットワークの構築も未着手であったが、その必要性は高いことが分かった。3.米国の精神障害者地域リハビリテーションサービスは病院から独立し、独自の補助金システムと寄付金によって経済基盤を確立し、利用者本位のプログラムが確立している。その成立要件ついて分析すると、行政機関との分業と連携であり、利用者の要望を吸収し、安定的な就労に向かう多層なバックアップシステムを構築することが必要であり、その結果、利用者の安定的な就労意識の向上が図れるものと思われる。
|