結論 わが国においても精神障害者の就労支援サービスは公的・私的のいかに関わらず広範囲で取り組まれている。しかし、根拠となる法律は厚生・労働の両省に分かれており発展が遅れている。また、精神障害者の就労支援は医学モデルを基盤とし、社会的経済的自立をめざしていない。精神障害者の多数は、治療を継続しながらもできるだけ社会に参加し、経済的にも自立したいと考えており、支援プログラムの策定が望まれている。本研究では精神障害者の就労が長期に継続しない例が多いのは、制度上の限界もさることながら、精神障害者の就労に関して、精神障害者の就労意欲にあった心理・社会支援に関するサポート手段が構築されていないのではないかという仮説にたって調査した。その結果、 1.精神障害者の就労支援を促進するには、病状や治療状況に着目するのではなく、障害者自身が使いやすい身近な支援システムを構築する必要がある。 2.この支援システムは、スタッフが企業と提携することが可能なバックアップシステムによって支えられていることが不可欠である。 3.また、職場と職域を開発する専門スタッフの専任化が必要である。 4.障害者の雇用を促進できるような制度への転換は、広範な一般企業の協力が不可欠である。 5.精神障害者が就労への動機を不安なく高めるためには、失敗や不安に対して障害者同士が乗り越える方法について話し合えるような集団による相互支援が重要である。
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