研究概要 |
神戸薬科大学では医療薬学コースの第1期生が卒業を控え,大学院でのカリキュラムがどのように成果を上げたかが問われることとなった.4名の大学院生は全員就職が決定したが,その進路は必ずしも病院ばかりではない.また,修士論文のテーマと病院研修中のテーマの一致をみている例は(部分的一致を含めて)半数である.現在のところ,病院実習と学内での研究との間には乖離が見られる.4名の大学院生を対象にアンケート調査を実施し,学内での講義や事前実習の必要性について検討を行った.同様のアンケート調査を徳島大学薬学部医療薬学専攻の大学院生に対しても実施し,双方の結果を比較検討した.両大学とも,学生は事前教育の必要性を感じており,学部教育と大学院における医療薬学教育の間のギャップが存在していることが伺える.神戸薬科大学の場合,病院研修中に,薬物治療上の問題点と関連する研究テーマが与えられた学生は4人中2人で,研修中もしくは研修直後に学会発表を行っている.しかし,その内容が修士論文の内容と一致していたものは1名であった.研修病院と大学の間で,研究面における協力関係が成立するためには,状況がさらに整備される必要がある.徳島大学薬学部の場合,院生の中途退学が何例かあり,大学院における研究活動よりも,就職が学生の主たる関心事である様子が如実に伺える.医療薬学コースあるいは医療薬学専攻を大学院に設置する大学が増加しつつあるが,その評価は学内におけるものと,学外からのそれの間に乖離が認められることは否めない.今後,卒業生の動向の追跡調査を行うとともに,医療薬学教育の学外での評価を高めるための努力を,大学は行う必要があるだろう.
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