分裂病の遺伝子解明を困難にしている理由の一つに、遺伝子解明に適当な症候群性の分裂病が存在しないことがある。22q11欠失症候群は患者の約10%ほどが思春期以降に分裂病とくに妄想型を発症することが報告され、分裂病の遺伝子解明の手がかりになる可能性がある。しかし、精神疾患患者集団での大規模な調査がされていないため、精神疾患におげる22q11欠失のかかわりは不明である。本研究では、22q11欠失のPCR法を用いたスクリーニング法を開発した。 PCR法を用いて22q11欠失の有無を決定する方法は、Homologous Gene Quantitative PCR法(HGQ-PCR)を用いた。22q11欠失症候群の共通欠失領域中に存在する遺伝子のうち、ZNF74遺伝子とそれと相同的なX染色体の領域を同じプライマーで増幅し、X染色体から由来する増幅産物をreferenceとしてZNF74由来の増幅産物の量比で欠失のスクリーニングとした。22q11欠失の確認はFISH法を用いて行った。 HGQ-PCR法によるスクリーニングを分裂病患者300人、コントロール300人の計600人に対して行ったところ、分裂病群に1人欠失の可能性のある人が検出された。この症例に対してTUPLE1をプローブとして染色体FISHを行ったところ、欠失が証明された。この患者は、妄想型分裂病の他、軽度精神遅滞があった。しかし、心奇形、口蓋裂などの22q11欠失に特徴のある臨床症状はなかった。 本研究で検出された22q11欠失の患者は身体所見は乏しく、本研究によるスクリーニングがなければ、22q11欠失の診断は不可能であった。本研究結果は、学習障害を合併している分裂病患者では22q11欠失の有無をスクリーニングすることが必要であることを示している。本研究で開発された方法はその診断スクリーニングとして役立つことが期待される。
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