研究概要 |
ヒト免疫系培養細胞を用いて、細胞死に対する高圧力の効果の解析を進めた。ヒト培養細胞[株化Bリンパ芽球(EB3)、Brukittリンパ腫細胞株(Ramos)、前骨髄球性白血病細胞株(HL-60)]を、培養液に浮遊させたまま37℃で30分間一定の圧力で加圧し、細胞死の圧力依存性を調べた。EB3試料では生細胞率が50%になる圧力P_<1/2>は約170MPaであった。100MPaで30分間加圧したEB3試料では除圧後約8時間まではネクローシス細胞が漸増し、それ以後よりアポトーシス細胞が出現し増加した。50MPa加圧した場合はアポトーシスは誘起されなかった。アポトーシスは蛍光顕微鏡および電子顕微鏡による細胞形態観察のほかDNA切断端を認識するTUNEL法により検出した。圧力でヒトの細胞にアポトーシスが誘起されることを初めて見いだされたことになり、Experimental Cell Reseachに発表した。Ramos、HL-60とも定性的には同様の圧力依存性を示し、生細胞率は圧力増加に従ってシグモイダルに減少した。Ramos、HL-60のP_<1/2>はそれぞれ約130MPa,150MPaであり、EB3に比べて低い圧力で細胞死が起きることがわかった。Ramosは100MPa加圧後約8時間後からアポトーシスが観察され、EB3と類似していた。HL60では8時間以内にアポトーシス細胞率が80%に達し、ネクローシスが顕著でなく、細胞の種類により高圧力の効果に差があることがわかった。さらに、加圧前(対照試料)、30分間加圧して除圧直後および5時間、10時間経過した試料(EB3)において、アポトーシス関連蛋白(Bcl-2,Bax,p53,Cpp32など)およびα-tubulinなどのウエスタンブロット解析を行い、圧力によるアポトーシスの分子機構の一端を明らかにした。
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