糖尿病患者のインシュリン分泌リズムが健常者と異なること、また糖尿病動物モデルでも血中コスチコステロンの概日リズムが消失するなど、糖尿病によってサーカディアンリズムの異常が誘発されることが報告されている。しかしながら、これまで時計機構の異常について詳細には検討されていない。そこで本実験ではインシュリン非依存型糖尿病モデルOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty(OLETF)ラットおよびインシュリン依存型糖尿病モデルstreptozotopcin(STZ)投与ラットを用いて、行動、視交叉上核自発放電、および光誘発性Fos蛋白発現を指標に、糖尿病と体内時計機構との関連性について検討した。その結果、以下の点が明らかになった。 1. 明暗条件でOLETFラットを飼育すると、行動開始時刻が対照ラットに比べて遅いことが明らかになった。 2. OLETFラットでは、糖尿病発症後視交叉上核の自発放電リズム頻度の昼夜差が減少する。一方、STZ投与ラットでは、対照ラットとの間に大きな差は見られなかった。 3. glutamateによって誘発される自発放電リズムの位相変化は、糖尿病発症前のOLETFラットで既に有意に減弱しており、発症後はさらに小さくなる。しかし、STZ投与ラットでは発症2-3ケ月後でも対照群と同様の位相変化が観察された。 4. 低照度の光誘発性Fos蛋白の発現は糖尿病発症前のOLETFラットで減少した。高照度では、糖尿病発症後のOLETFラット、STZ投与ラットともに減少した。 以上の結果より、インシュリン非依存型糖尿病モデルOLETFラットは糖尿病発症以前より同調機能に異常がある可能性が示唆された。STZ投与ラットではリズム異常は誘発されていない可能性が考えられる。
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