本研究の目的は、薬物による生体リズム障害動物モデルを開発することである。平成9年度の目標は、インターフェロン(IFN)単回あるいは連続投与時の生体リズムマーカー(体温およびコルチコステロン)に及ぼす投薬時刻の影響およびIFNによる生体リズム障害動物モデルの作成である。実験動物として自由摂食摂水・明暗周期(明期: 07:00-19:00)条件下で飼育したICRマウスを使用した。IFN単回投与時の発熱作用には投薬時刻による有意な差異が認められ、発熱作用は明期(動物の休息期)に増強された。その機序として視床内PGE_2濃度の時間的変化および薬物未処置時の体温の日周リズムの関与が考えられる。IFN単回投与時のコルチコステロン分泌作用にも投薬時刻による有意な差異が認められ、コルチコステロン分泌作用は明期前半に増強された。その機序として薬物未処置時のコルチコステロンの日周リズムの関与が考えられる。薬物未処置時の体温およびコルチコステロンの日周リズムの中で低値を示す時刻にIFNを投与することにより、発熱作用およびコルチコステロン分泌作用ともに増強された。浸透圧ミニポンプを用いIFNを一週間連続投与することにより、生体リズムマーカーである体温およびコルチコステロンの日周リズムが変容することを明らかにした。薬物未処置時には、体温およびコルチコステロンともに明期に低値を示すが、IFNの連続投与によりリズムの振幅が消失することを明らかにした。現在、生体リズム障害動物のモデルとしての妥当性を評価する目的で、生体リズムの発生源である視床下部の視交叉上核におけるエネルギー代謝、DNA合成能およびタンパク合成能の日周リズムを指標にリズムが如何に変容するかを検討している。
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