本研究の目的は、薬物による生体リズム障害動物モデルを開発することである。昨年度は、末梢で認められる体温、コルチコステロンの日周リズムに及ぼすインターフェロン(IFN)の影響について検討し、これらの生体リズムマーカーの振幅が減少し、日周リズムが消失することを明らかにした。平成10年度の目標は、IFN連続投与時に生体リズムの発生源である視床下部の視交叉上核(SCN)におけるエネルギー代謝能、DNA合成能およびタンパク合成能の日周リズムが如何に変容するかを明らかにすることである。実験動物として自由摂食摂水・明暗周期(明期:07:00-19:00)条件下で飼育したICR雄性マウスを使用した。浸透圧ミニポンプを用いIFNを7日間連続投与後、0900、1300、1700、2100、0100、0500時に脳スライスを作成した。SCNへのグルコース(エネルギー代謝能)、チミヂィン(DNA合成能)およびロイシン(タンパク合成能)の取り込み量を測定し、各時刻間で比較検討した。薬物未処置時には、エネルギー代謝能、DNA合成能およびタンパク合成能いずれも明期(休息期)に上昇し、暗期(活動期)に低下する有意な日周リズムが認められた。一方、IFNの連続投与時には、リズムの振幅が減少し、日周リズムが消失することを明らかにした。以上の結果から、IFNは中枢の体内時計に影響することが明かとなった。現在、SCNに存在する時計遺伝子(mperl、mper2)の日周リズムに及ぼすIFNの影響について検討している。
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