研究概要 |
本年度は、ビフェニル酢酸/シクロデキストリン結合体(BPAA/CyD conjugates)の大腸送達性プロドラッグとしての有用性を明らかにするため,ラットに経口投与後の消化管内分布,in vivo薬物放出挙動,BPAAの吸収挙動,さらにcojugate投与後の抗炎症効果を検討し,以下の知見を得た. 1) CyD conjugatesをラットに経口投与すると,投与後2〜3時間で盲腸・大腸に到達した.α-およびγ-CyD ester conjugatesは速やかにBPAAを遊離し,このBPAAは血中へ移行した.α-およびγ-CyDamide cojugatesはmaltose conjugateへ加水分解されたが,血中移行性は低かった.加水分解速度はγ-CyD conjugateの方がα-CyD conjugateに比べて大きかった.一方,盲腸・大腸中におけるβ-CyD conjugatesからBPAAの放出はほとんど観察されなかった. 2) CyD conjugatesをラットに経口投与後の血清中BPAA濃度推移を薬物単独およびBPAA/β-CyD複合体の場合と比較すると,BPAA単独および複合体投与では血中BPAA濃度が速やかに上昇した(t_<max>=0.5及び1.5時間).一方,α-およびγ-CyD ester conjugatesでは,経口投与後2〜3時間のラグタイムを経て血中薬物濃度が上昇し(t_<max>=8〜9時間),BPAAの吸収率はBPAA単独および複合体投与に比べて著しく増大した.一方,V3-CyDconJugateの場合は血中BP.XA濃度が著しく低かった. 3) γ-CyD ester conjugate投与時の抗炎症効果をカラゲニン誘発足蹠浮腫ラットモデルを用いて評価した結果,BPAA単独投与時の抗炎症効果はほとんど観察されなかった.速溶解性のBPAA/β-CyD複合体は,投与0.5〜1時間後に抗炎症作用を発現した.一方,γ-CyD ester conjugateの場合は12時間後に大きな抗炎症作用が観察された. 上記in vivo実験から,BPAA/CyD conjugatesは盲腸・大腸内で選択的に薬物を放出することが確かめられた.特にCyD ester conjugatesは遅延放出性プロドラッグとして機能し,経口投与における新規大腸送達システムとして他の薬物への有効利用が示唆された.
|