研究概要 |
パラコート(PQ)誘発wet-dog shake(WDS)は血液脳関門透過性調節の変化によることが示唆されている。このWDSにおける一酸化窒素(NO)、オピオイド受容体、N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体およびバソプレッシン受容体(V1)の関与についてSD系雄性ラットを用いて検討し、次の結果を得た。1,非特異的NO合成酵素(NOS)阻害薬であるNω-nitro-L-arginine(L-NA;10-30mg/kg,i.p.)は、PQ(70mg/kg,s.c.)誘発WDSを抑制したが、L-NAの異性体でNOS阻害作用の弱いD-LAには抑制作用は認められなかった。また、neuronal NOSに選択性の高いNOS阻害薬である7-nitroindazole(7-NI;50mg/kg,i.p.)もWDSを抑制した。L-NAおよび7-NIのWDS抑制作用は、NOの前駆体であるL-arginine(L-Arg)投与により全く影響を受けなかったが、オピオイド受容体拮抗薬であるnaloxoneにより消失した。2,PQ誘発WDSは、NMDA受容体遮断薬であるMK-801により抑制されず、むしろ増強される傾向であった。3,PQは側脳室内(i.c.v)投与では100nmolまでWDSを誘発しなかったが、50nmolをdosal hippocampus(DH)、あるいはventral hippocampus(VH)に直接投与すると強いWDS誘発作用を示した。caudate putamenあるいはamygdalaへの投与ではWDS誘発作用は弱かった。PQをDHに投与した場合に誘発されるWDSは、L-NA(30mg/kg,i.p.)により強く抑制された。4,V1拮抗薬OPC-21268(50および100mg/kg,i.p.)は、PQ(70mg/kg,s.c.)誘発WDSを抑制したが、その抑制作用は弱く、i.c.v.投与(10nmol)でも抑制作用は同程度であった。PQ(50nmol)のDH内投与誘発WDSは同部位へのOPC-21268(1nmol)前処置によって強く抑制された。以上の知見から、PQ誘発WDSにはhippocampusが重要な役割を演じており、オピオイド受容体およびV1の関与が示唆された。また、NOの関与についてはさらに検討が必要であるものと考えられる。
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