これまでリンパ球の薬物感受性を測定し得た腎移植患者、ネフローゼ症候群患者、乾癬患者、慢性関節リウマチ患者、重症筋無力症患者、および潰瘍性大腸炎患者を対象に、平成9年度に引き続いてリンパ球の薬物感受性と薬物の治療効果との関連を調査した。腎移植患者および乾癬患者におい石羽珠に両者の関係を確認しているが、本年度は重症筋無力症患者、ネフローゼ患者、あるいは潰瘍性大腸炎患者においても、リンパ球の薬物感受性と薬物の治療効果との間に関連があることを示唆した。 次にこれと平行して、健常者リンパ球に対するステロイド剤(プレドニゾロンとメチルプレドニゾロン)、シクロスポリン、あるいはタクロリムスのアポトーシス誘導作用を検討した。リンパ球のアポトーシスは、生化学的常法(アポトーシス小体発現率、寒天ゲル電気泳動法、およびセルソータ解析)による分析を中心に、検出を試みた。また、断片化はDNAを特異的に検出するELISAキットを用いたアポトーシスの定量化も同時に行った。上記した免疫抑制薬は、いずれもマイトゲンで活性化したヒト末梢血リンパ球に対してアポトーシスを誘導した。更に、免疫抑制薬によるリンパ球のアポトーシスが、種々のサイトカインを加えることによって阻害されることを示した。これらの結果は、免疫抑制薬の作用がリンパ妹にアポトーシ不奮誘導することによって発現すること、およびその機構にサイトカイン産生抑制作用が関係していることを示唆した。また以上の知見から、リンパ球が免疫抑制薬のアポトーシス誘導作用に対して耐性である場合、この患者は免疫抑制薬の治療にも耐性を示す可能性を指摘した。
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