本研究は、種々の免疫関連疾患における免疫抑制薬の適正使用基準を患者末梢血リンパ球を用いて薬力学(pharmacodynamics)的に求め、さらに各疾患における免疫抑制薬耐性の分子機構を探ることを目的とした。そこで、自己免疫疾患、炎症性疾患、ネフローゼ症候群、臓器移植等における患者リンパ球のグルココルチコイド(GC)あるいはシクロスポリン感受性と薬物の治療効果との関連、および薬物感受性低下の成因について検討した。上記疾患患者の免疫抑制薬耐性を検査する手段として患者末梢血リンパ球を用いた感受性試験を導入し、in vitroでの薬物感受性と各種免疫抑制薬の治療効果との関連を検討した。更に、特定の薬物に耐性を示す患者にはどの代替薬物が適切かをリンパ球の薬物感受性試験の結果から算定し、耐性患者に対する理論的代替療法を構築することを試みた。また、末梢血リンパ球の各種免疫抑制薬耐性機構に関する検討を、疾患ごとに行った。当該年度を通じ、各種免疫関連疾患におけるリンパ球の免疫抑制薬感受性の個人差や疾患特異性について明らかにすると共に、リンパ球の薬物感受性と薬物の治療効果がいずれの疾患においても良く相関することを明らかとした。また、リンパ球の免疫抑制薬耐性機構は、疾患によってそれぞれ異なることを示した。これらの知見から、患者末梢血リンパ球を用いて種々の免疫抑制薬感受性を測定することにより、薬物の治療効果を予測できるものと考えられた。更に、対象となる患者が一部の薬物に耐性を示す場合にも、リンパ球の薬物感受性に基づいて他の薬物を治療薬として選択することが可能になると結論した。
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