研究概要 |
κ-オピオイド作動性神経系の学習・記憶に対する生理学的意義を明らかにするため,コリン作動性神経伝達を抑制するcarbachol,scopolamineまたはmecamylamineにより誘発される学習・記憶障害に対するκ-オピオイド受容体作動薬の作用を,行動薬理学的および神経化学的に検討し,以下の結果を得た. 1.Carbacholにより誘発された学習・記憶障害は,脳内神経ペプチドのダイノルフィンA(1-13)(0.5nmol/rat,i.c.v.)または,選択的なκ-オピオイド受容体作動薬であるU-50,488H(0.64μmol/kg,s.c.)の投与により有意に改善された. 2.ムスカリン受容体拮抗薬であるscopolamine(3.3μmol/kg,s.c.)および,ニコチン受容体拮抗薬であるmecamylamine(40μmol/kg,s.c.)による学習・記憶障害は,U-50,488Hにより改善された. 3.Carbacholを海馬内に灌流すると,海馬の細胞外アセチルコリン濃度が有意に減少した.この作用は,ダイノルフィンA(1-13)(0.5nmol/rat)を側脳室内に投与することにより有意に抑制された.また,ダイノルフィンA(1-13)による抑制作用は,nor-binaltorphimine(n-BNI;4.9nmol/rat)の前処理によりほぼ完全に拮抗された. 4.Mecamylamineによる細胞外アセチルコリン濃度の減少をU-50,488Hは有意に抑制した.また,この作用は,n-BNI(4.9nmol)の前処理によりほぼ完全に拮抗された. 以上の結果より,脳内神経ペプチドのダイノルフィンなどκ-オピオイド受容体作動薬は,アセチルコリン遊離の減少を伴う学習・記憶障害を改善する可能性があることを示唆した.
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