研究概要 |
分泌シグナルを付加したEGF遺伝子およびSOD遺伝子を哺乳動物用発現ベクターに組み込んだ.そしてこれらベクターをカチオン性リポソームを用いて線維芽細胞やガン細胞に導入し,EGFやSODの分泌性や細胞増殖について比較検討した.ELISA法により,培養液中のEGF量を測定したところ,分泌シグナルを持たないベクター導入ではほとんどEGFの分泌は認められなかったが,インターロイキン2(IL2)の分泌シグナルを付加したEGF遺伝子含有ベクターでは,分泌量の増大を認め,特にIL2の分泌シグナルに持続ペプチドの遺伝子を付加することがEGFの分泌に有効であった.分泌されたEGFは生理活性を保持していることをDNA合成の促進や細胞運動性の亢進により確認した.そして培養液中での分泌EGFの安定性も合成EGFに比べて高いことが観察された.SODについてはヒト腎ガン細胞にSOD遺伝子を導入することで細胞増殖速度の変動することを認めた.さらに過酸化水素の添加やキサンチンオキシゲナーゼ・ヒポキサンチン処理等により活性酸素刺激を培養細胞に与えた場合,高濃度では細胞死に至るが,低濃度の処理では細胞の増殖感受性が高まることを認めた.そして細胞内のSOD活性よりもグルタチオンパーオキシダーゼ活性がキサンチンオキシダ-セ・ヒポキサンチン処理で上昇することを線維芽細胞で観察した.現在細胞増殖の至適条件について検討を行っており,平成10年度は至適濃度分泌制御を目的とした培養細胞への分泌性SOD遺伝子導入やEGF遺伝子の導入法について検討を行い,これら両遺伝子導入による細胞増殖性,運動性などの薬理効果について確認することを計画している.
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