我々は、酸性多糖を多量に含む軟骨や、天然、合成硫酸化多糖に血管新生阻害活性が存在すること、これらが血管内皮細胞の管腔形成を抑制することを見出している。基底膜成分であるヘパラン硫酸がFGF作用発現を制御する可能性に注目し、硫酸化多糖の血管新生阻害作用機序を更に解析することとした。そこで今年度は、これら硫酸化多糖がどのような構造を保つとき、血管新生阻害作用が強いか、また薬剤として可能性のある硫酸化多糖の効果を発揮しうる最適な構造はどのようなものであるかを明らかにしようと試みた。 昨年度までに硫酸基/糖の比がほぼ0.5であるコンドロイチン硫酸には、阻害活性は認められない事を明らかにしたが、今回硫酸基を導入しポリ硫酸にすると阻害活性を示すことを明らかにすることができた。 通常酸性多糖は、かなりの高分子量であり、このような長大な物質は薬剤として用いる場合、体で吸収されずに排出されることが多く、また抗血液凝固作用があり難点を有する。そのため阻害効果のある酸性多糖の低分子化は重要である。そこで我々はデキストラン硫酸とヘバリンを低分子化しその血管新生阻止能が保持されるかどうかを検討した。その結果、分子量10000以下、2000までのデキストラン硫酸8種類は阻害活性を保っており、低分子化による活性の消失はなかった。ヘパリンに関しても同様の結果が得られた。 以上より、低分子化硫酸化多糖は阻害活性を保持し、薬剤としての可能性およびFGFの作用機序を考える上で、その有用性が示された、また硫酸化度の高い多糖は血管新生阻止活性が高いことがわかった。高硫酸の多糖を低分子化することにより、抗血液凝固作用に影響なく、吸収の良い血管新生阻害オリゴ糖薬剤の開発の可能性が示唆された。
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