低比重リポ蛋白(LDL)には、血小板活性化作用および血小板活性化促進作用は認められないが、硫酸銅などで酸化修飾を受けると低濃度で血小板凝集の促進作用を、高濃度になると単独で血小板凝集を惹起し、CD62PやCD63などのいわゆる活性化抗原の発現をも惹起する。これらの酸化LDLによる血小板活性化は、主として細胞内カルシウム動員による細胞質遊離カルシウムイオンの増加を伴うが、シクロオキシゲナーゼ阻害剤やトロンボキサンA_2アンタゴニストにより抑制されなかったことから、アラキドン酸-トロンボキサンA_2系に依存しない活性化経路を介していると考えられた。酸化LDLの血小板活性化作用は、native LDLやnative HDLをあらかじめ短時間インキュベートすることによって抑制された。また酸化LDLによる血小板活性化は抗CD36モノクローナル抗体によって部分的に抑制され、血小板CD36欠損者の血小板は、CD36陽性血小板に比べ酸化LDLによる血小板活性化作用は減弱していた。 今回フローサイトメトリー法にて、1094例の健常人の血液から血小板CD36の有無をスクリーニングしたところ、血小板CD36欠損は68例(6.2%)であり、このうち血小板、半球ともにCD36が欠損しているTypeIは9例(0.82%)、血小板のみにCD36が欠損しているTypeIIが59例(5.39%)であった。CD36欠損の遺伝子型では、TypeIの8例中、exon4のCT置換のホモ接合体が5例、exon4のCT置換とexon10の1塩基挿入の複合へテロ接合体が2例、exon4異常のホモ接合体とexon10異常のへテロ接合体の合併が1例であった。またTypeIIの48例中、exon4異常のへテロ接合体が14例、exon10異常のへテロ接合体が6例、exon4異常とexon10異常の複合へテロ接合体が4例、exon5の2塩基欠失のへテロ接合体が2例で、残りの22例では既知の3種類の異常は認められなかった。 これらのCD36欠損例では、陽性例と比較し血清脂質プロフィールが変化しており、総コレステロールおよびLDL-コレステロールが有意に高値をとった。CD36は酸化LDLのみならず循環血液中でLDLに対してもレセプターとして働き、欠損例では循環血中でLDLの細胞内取り込みが低下し、LDL-コレステロールの増加を来したものと推測された。CD36欠損例での動脈硬化の進展の相違について検討の必要があると思われる。
|