本年度においては高血圧症におけるアンジオテンシンII1型受容体(AT1R)遺伝子多型および終末期腎不全におけるAT1Rとアンジオテンシノーゲン(AGT)遺伝子多型の解析を行った。 1. 高血圧患者166名(男性79名、女性97名)と正常対照者174名(男性51名女性123名)を対象として、AT1R遺伝子A1166C多型を解析した。正常対照群における遺伝子型の頻度はA/A83.3、A/C16.1、C/C0.6%であり、高血圧症群においてはA/A81.9、A/C17.5、C/CO.6%であった。A1166C多型は遺伝子型においても対立遺伝子においても高血圧症と連関が認められなかった。 2. 慢性維持血液透析患者253例(男性148例、女性105例)と正常対照者193例(男性76例、女性117例)を対象として、AGTM235T多型及びAT1RA1166C多型を解析した。AGTM235T多型の正常対照群における遺伝子型の頻度はM/M5.2%、M/T25.4%、T/T69.4%であり、透析患者においてはM/M4.0%、M/T30.4%、T/T65.6%であった。また、AT1RA1166C多型の正常対照群における遺伝子型の頻度はA/A80.8%、A/C18.1%、C/C1.0%であり、透析患者においてはA/A86.5%、A/C11.9%、C/C1.6%であった。AGT M235T多型およびAT1RA1166C多型の遺伝子型の分布はいづれも透析患者と正常者のあいだで差を認めなかった。また、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、またIgA腎症など腎不全に至る原因疾患別においても差は認められなかった。 次年度は、脳血管障害に対象を拡げ、アンジオテンシン変換酵素遺伝子多型についても検討の予定である。
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