レニン・アンジオテンシン系の構成因子であるアンジオテンシノーゲン(AGT)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、アンジオテンシンII1型受容体(AT1R)の各遺伝子は、高血圧やその関連疾患の発症や悪化の遺伝的要因としての役割が注目されている。青森県は高血圧症の発症頻度が高く、その遺伝的背景についての検討が求められていた。そこで、青森県の高血圧患者と健常対照者においてAGTM235T多型、ACEI/D多型、AT1RA1166C多型の分布を比較し、その病態的意義について検討した。また、終末期腎不全および脳卒中についても同様に検討を行った。その結果、AGTM235T多型およびACEI/D多型と高血圧症とのあいだに有意の連関が認められた。しかし、AT1RA1166C多型とは連関が認められなかった。また、3多型は終末期腎不全とは連関しなかった。他方、ACEI/D多型は、脳卒中との連関が認められた。とくに、梗塞性疾患に比し出血性疾患でより強い連関が認められた。 以上の結果から、青森県における高血圧の遺伝的危険因子としてAGTM235T多型およびACEI/D多型が重要で遺伝子マーカーとなり得る可能性が示唆された。さらに、ACEI/D多型は脳卒中の遺伝子マーカーとしても重要である可能性があり、今後、大規模研究の基礎となる重要な所見と考えられた。
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