研究概要 |
低分子化合物(ハプテン)の微量定量法として競合型イムノアッセイが汎用されているが,原理上,その測定感度には自ずと限界がある.しかし,抗ハプテン抗体とこれに対する抗イディオタイプ抗体を組み合わせて用いることで,従来不可能とされてきたハプテンの高感度な非競合型イムノアッセイ法を確立し得るものと期待される.そこで,モデルハプテンとして11-デオキシコルチゾール(11-DOC)をとりあげて抗イディオタイプ抗体を調製し,その諸性質に検討を加えた. 目的の抗イディオタイプ抗体を得るためには,高純度の抗ハプテン抗体で動物を免役することが望まれる.そこで,先に樹立したハイブリドーマ株をBALB/cマウスに腹腔内投与して,モノクローナル抗体11-DOC抗体(CET-M8)を大量に調製した.これを水溶性カルボジイミドによりヘモシアニトンと結合させたのち,BALB/c及びA/Jマウスに繰り返し免疫投与した.その脾細胞をNS-1ミエローマ細胞と融合させて抗イディオタイプ抗体産生株10種を確立した.得られたモノクローナル抗体10種の性質を,CET-M8抗体のF(ab')_2フラグメントとの反応性を指標とするELISAにより検討したところ,1種(Ab-BA1♯38)は,その反応性が11-DOCの添加により強く阻害されることから,パラトープを認識するβタイプ抗イディオタイプ抗体であることが判明した.他の9種についてはこうした阻害は認められず,フレームワーク領域を認識するαタイプ抗イディオタイプ抗体を推測された.これらαタイプ抗体のうち,Ab-BA1♯29とAb-AJ2♯29の2種は,そのF(ab')_2フラグメントとの反応がβタイプ抗体(Ab-BA1♯38)の添加により著しく阻害されることから,パラトープの近傍に位置するイディオトープを認識することが示唆された.これらの抗イディオタイプ抗体を活用することにより,ハプテンの超高感度非競合型イムノアッセイを構築するための普遍的な方法論を開発し得るものと期待される.
|