研究概要 |
低分子化合物(ハプテン)の微量分析法として競合型イムノアッセイが汎用されているが,原理上,その測定感度には自ずと限界がある.しかし,抗ハプテン抗体とこれに対応する抗イディオタイプ抗体(抗Id抗体)を組み合わせて用いることで,従来不可能とされてきたハプテンの高感度な非競合型イムノアッセイ法を確立しうるものと期待される.そこで,モデルハプテンとして胆汁酸代謝物のひとつであるウルソデオキシコール酸7-N-アセチルグルコサミニド(UDCA7-NAG)を取り上げて抗Id抗体を調製し,非競合型イムノアッセイを試みた.先に調製した抗UDCA7-NAG抗体,Ab_1#8をハプテンでアフィニティーラベルしたのちヘモシアニンとの結合体としてA/Jマウスに反復投与し,その脾細胞をNS-1ミエローマ細胞と融合させて,6種の抗Id抗体産生株を確立した.得られたモノクローナル抗体6種のうち4種はAb_1#8のフレームワーク領域を認識するαタイプ抗Id抗体で,2種はパラトープを認識するβタイプ抗Id抗体であった.これらの抗体の相互作用を検討した結果,αタイプのAb_2-19とβタイプのAb_2-45を組み合わせて用いることで,非競合型イムノアッセイが可能なことが判明した.すなわち,Ab_1#8のF(ab')_2フラグメントを吸着させたマイクロタイタープレートにUDCA7-NAG,Ab_2-45,及びビオチン標識したAb_2-19を同時に加えて室温で8時間インキュベーションした.ついで固相上のビオチンを検出するためにペルオキシダーゼ標識ストレプトアピジンを添加して更に1時間インキュベーションし,プレート上に結合した酵素の活性を吸光光度法により測定した.本アッセイ系で用量作用曲線を作成したところ,測定可能範囲はおよそ0.2〜500pgと極めて広く,検出限界(0点における酵素活性の標準偏差の2倍に相当するハプテン量)は130fg(220 amol)で,同一の抗ハプテン抗体(Ab_1#8)を用いた競合型イムノアッセイに比べて約10倍高感度であった.現在,各抗体の添加量や添加の順序など,各種パラメーターの至適条件について検討を進めているが,さらに高感度化が可能と期待される.
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