寛解期白血病患者における残存微少白血病細胞検出法と患者予後推測システムの開発

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09672352
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 奈良 信雄 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (00142258)
• 研究分担者: 東田 修二 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (80251510) ; 村上 直巳 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (50143582)
• キーワード: 急性白血病 / 白血病コロニー / サイトカイン / 免疫グロブリン重鎖遺伝子 / T細胞レセプター遺伝子

研究概要

白血病の治療技術の発展に伴い、急性白血病患者の完全寛解率は向上し、生存期間の延長も図られてきた。しかし、依然として再発を起こして早期に死亡する患者は絶えない。現在の白血病治療の重大な課題は、いかに再発を防ぎ、完全な治癒に導くかにある。その意味では、患者の体内に残っている少数の白血病細胞を検出し、再発を早期に予知して、対策を講じることが重要である。
急性白血病患者の末梢血液もしくは骨髄穿刺液から単核細胞を分離し、メチルセルロース培地と液体培養系で細胞培養を行った。増殖刺激因子としてはG-CSF、GM-CSF、IL-3、SCFを加え、コロニー形成能と、液体培養系でのclonogenic cellsの増殖を検討した。診断時、および再発時の患者末梢血液と骨髄穿刺液の培養では、典型的な白血病コロニーがメチルセルロース培地で形成され、しかも液体培養系でclonogenic cellsが指数関数的に増殖することが確認された。しかし、治療によって完全寛解に導入された時点では、白血病コロニーは完全に消失していた。そこで経過を追跡し、末梢血液と骨髄中での白血病コロニー形成細胞の検出を試みたところ、白血病コロニーが経過中に出現したような症例では再発することが確認できた。
また、免疫グロブリン重鎖遺伝子あるいはT細胞レセプター遺伝子の再構成がみられた白血病患者では、完全寛解に導入された時点で完全に消失していた再構成バンドが、再発時には再び出現することも確認できた。
以上の研究成果から、白血病患者体内に残存する微少白血病細胞を検出するには、細胞培養法と、遺伝子解析を併用することの有用性が支持された。次年度ではさらに研究を続け、患者の予後を推測できるシステムの開発を図る予定である。

研究成果

• [文献書誌] Nara N, Kurokawa H, Tohda S, Tomiyama J, Nagata K, Tanikawa S: "Effect of vesnarinone,a quinolinone derivative,on the growth of leukemic blasts in acute myelogenous leukemia." Experimental Hematology. 25・3. 199-204 (1997)
• [文献書誌] Tohda S, and Nara N: "Phosphorylation of signaling proteins in factor-independent myeloid leukemia cell lines." International Journal of Oncolgy. 11. 843-847 (1997)
• [文献書誌] Tanikawa S, Sakamaki H, Onozawa Y, Kaku H, Adachi Y, and Nara N and et al.: "Effect of continuous intravenous administration of high-dose G-CSF on hematologic recovery following autologous purged bone marrow transplantation." International Journal of Oncology. 11. 1355-1361 (1997)
• [文献書誌] Tohda S, Maruyama M, and Nara N: "Molecular typing of methicillin-resistant staphylococcus aureus by polymerase chain reaction : distribution of the typed strains in hospitals." Internal Medicine. 36・10. 694-699 (1997)