研究概要 |
1) B細胞系のEpitope Spreading マウスにTSH日受容体354-367位相当合成ペプチドを免疫し、モノクローナル抗体を分離した。甲状腺細胞に対する生物活性では(1)cAMP産生刺激活性抗体、(2)TSH刺激性cAMP産生に対する阻害性抗体、(3)非作用性抗体に分類され、その認識部位を解析した。 代表的な抗体を放射性ヨード標識し、甲状腺細胞への結合アッセイ系を作成し、抗体の相互の競合作用やバセドウ病患者血清を用いて各モノクローナル抗体の結合阻害活性を調べた。バセドウ病患者血清によって有意な結合阻害現象を示す抗体を認めたが,臨床病状や経過と結合阻害活性の間には特定の関連性は認められなかった。 2) T細胞系のEpitope Spreading実験 上記と同様の免疫を施したマウス脾細胞を経時的に採取し、活性型T細胞を追跡した。抗原特異性ELISPOT法にてIL-4産生細胞数が著増し、TSH-Rに特異的なTH2細胞系の活性化が誘導されることが明らかとなった。認識エピトープは抗原に用いた部分以外の複数箇所にも出現し、T細胞レベルでのEpitope Spreadingが実証された。TH2細胞の活性化と血中抗体価は有意な正の相関を示した。 ヒト末梢血を用いた安定した抗原特異性ELISPOT法を設立し(平成11年臨床病理学会近畿支部総会発表予定)、健常人と自己免疫性甲状腺疾患患者を対象に調べた。TH1系に大差がなかったが、バセドウ病患者では、IL-4産生細胞数が著増しており、TSH-Rペプチドの添加によって、更にその活性化が促進された(平成11年日本内分泌学会総会発表予定)。バセドウ病患者がTH2細胞系の活性化が生じていることが実証できたとともに、TSH-Rペプチドを用いた抗原特異的ELISPOT法によって、自己免疫性甲状腺疾患患者の診断に有用な新しい検査法の基盤が開発できたものと考える。
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