研究概要 |
見かけ上、T-ALL/LBLに分類されている未分化段階由来のNK腫瘍をいかに分離するか、というのが今回の研究である。CD7+CD2+の発現があり、しかも受容体(T細胞受容体及び免疫グロブリン)遺伝子が胚細胞型であった症例を、NKの未分子化段階由来腫瘍として報告した(Hematol Oncol 13:1-11,1995)。以後の症例の集積があったので、集計し、前胸腺段階では、CD7+CD5+が一般的な形質であり、CD7+CD2+例は少数であり、しかも、CD45RA/ROの発現のパターンが、RO型であり、一般の前胸腺段階のCD45RA型とは違っていたので、このCD7+CD2+の前胸腺段階とされる症例群の中に、NK由来のALL/LBLがある推察し発表した(発表1及び2)。 T細胞の分化成熟に際し、T細胞受容体(TCR)のβ鎖遺伝子が発現されていて、TCRα鎖が発現されない段階でpreTαが発現され、β鎖とヘテロ2量体を形成するとされている。これは、NK分化経路やγ・δTCR発現のT細胞には決して発現されることはない。従って、未分化段階由来のNK腫瘍の信頼できる陰性マーカーである。実際に、ALL/LBL材料に適用できるかどうかの検討を、株細胞にRT-PCR法により行った。未分化急性白血病由来株(1株)では陰性、CD3+4+8+5株に内1株を除いて陽性、成熟段階T細胞腫瘍2株では陰性、NK細胞1株で陰性、濾胞性リンパ腫3株の内1例で陽性2例で陰性、AML株1例で陰性、前B細胞ALL株6例の内1例陽性5例陰性であった。結論は、これらのpreTα遺伝子発現は現在のpreTα発現の分布の通説に概ね一致し、NK由来ALL/LBLの探索に有用と思われた。しかし、濾胞性リンパ腫株1例や前B細胞ALL株1例での発現や、TCRα鎖の分子レヴェルの発現が十分に発現があるにもかかわらず発現のある方が胸腺段階由来T-ALL株では通例であること、予想外に前B細胞ALLと濾胞性リンパ腫株のそれぞれ1例で発現があり、今後の検討が必要と思われた。preTα発現はヒトリンパ球系統で知見がまだなく、それ自体の研究の余地があると思われた(発表3)。
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