研究概要 |
血小板がインスリン感受性臓器の一つであることより、血小板凝集能を測定することによってインスリン感受性が測定しうるかどうかを検討した。Travatiらとは異なり、ヒト血小板凝集能は必ずしもインスリンの濃度依存性に抑制されなかった。つまりインスリンが、血小板内Ca++濃度を低下するのみに働くのではなく、血小板凝集に関連した、3つの酵素を調節して血小板凝集能変化を引き起こすことが明かとなった。さらに、アゴニスト(ADP)の濃度も検討し、至適濃度ADPを予め求め、これを用いるという簡易測定系を確立した。さらに添加インスリンをより生理的な濃度まで低下させた測定系を構築した。その結果、インスリン抵抗性のないと考えられるヒトでは0.063nmol/l(data not shown)から、同じく、ラットでは1.25nmol/lで血小板凝集能が有意に変化することを認めた。つまり、この低濃度域より開始するインスリン感受性測定系が生体内における血小板のインスリンに対する反応性をより忠実に反映ものと考えられた。これらにより、血小板でのインスリン感受性測定の簡易化が可能となり、測定時間の短縮とサンプル量の軽減がもたらされた。また、血小板のインスリン感受性指数とグルコースクランプ法で求めたglucose infusion rate(GIR)値との間にはr=0.779と、極めていう良好な相関性が得られた。さらに他のmetabolic markerとの相関性ではhomeostasis model assessment(HOMA)とr=0.54と有意の相関性を示し、IRI,T cholとも相関した。この検討で用いたHOMAとGIRとの相関はR=0.41であり、本法での測定値の信頼性が確認された。以上のように、我々が開発した血小板による簡易インスリン測定法でのインスリン感受性評価が可能であり、本法が簡便性、再現性にも優れていることより、ヒトへの臨床応用も可能であることが示唆された。
|