研究概要 |
1. 赤血球(RBC)凝集の誘電率の理論 : 膜の存在を考慮したshell modelの誘電理論にもとづき, ‘単分散' (流動下の全血のようにRBCが個々に散在するもの)と‘連銭'あるいは‘凝集塊'形成時のRBCの誘電率の差異を明らかにした.これにより,低周波域での‘誘電率'を指標にとれば,全血中の連銭形成をモニターできるがわかった. 2. 測定系の製作とテスト:全血用の‘回転式平行板コンデンサー型セル'と‘同軸プローブ'を自作した.前者は2mlの全血を試料とし,その流動条件を連続的に変え,誘電率をshear rateの関数として記録する.後者は赤血球沈降速度(赤沈)を電気的に計測する垂直型セルに装着できる.いずれも誘電特性の時間的変化を追跡できるよう,コンピュータ制御可能なプログラムを作成した. 3. 連銭形成能の定量化:セルの回転数を変え全血の誘電率を記録した.50kHzでの誘電率は回転数の増大により段階的に低下し,最高速106rpmで2600〜2700(単分散RBCsの値)となった.最低速12rpmでは,回転停止5分後のレベル6000〜7000の1/2以下であった.このように,「赤沈亢進」/「連銭形成能」/「血液誘電率」という連鎖をたどり,一定の連銭崩壊をもたらすのに必要な「最小shear stress」が定義できたので,「血液誘電率」の臨床生理学的意義がより明確になった.セルのデザインについては,回転型以外にも同軸プローブなど,より使い勝手のよいものを開発中である.
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