研究概要 |
C型肝炎患者血清における補体のCold Activation (以下CA)は、α_2-プラスミンインヒビターの添加により濃度依存的に抑制されたが、完全抑制には至らなかった。トラネキサム酸にも若干のCA抑制阻害効果を認めたが、ブデリン,ウリナスタチンは無効であった。患者血清中の内在性α_2-プラスミンインヒビター活性は健常者群のそれに比べ有意に低く、健常者の活性値は低温放置に伴い低下する傾向を示したが凝固第VII因子活性には有意差を認めなかった。さらに、プラスミン抗体の添加はCAを抑制する傾向を示した。患者血清を分子篩クロマトグラフィーを用い分子量分画し、各画分の健常者血清補体に対するCA惹起活性をスクリーニングしたところ、分子量10万以上の高分子画分に活性が検出された。また、限外濾過法により患者血清を分画し健常者血清に対するCA惹起活性を検索したところ、同様に高分子画分にのみ活性が認められた。そのCA惹起活性は濃度依存的であり、その活性はCA惹起後(補体消費後)の患者血清中にも残存していた。患者血清から分離されたクリオグロプリンの添加は健常者血清にCAを惹起させたが、一方、クリオグロプリン分取後上清の高分子画分にもCA惹起活性を認め、クリオグロプリン陰性のCA血清も存在した。以上の結果は、C型肝炎患者血清のCAには低温におけるプラスミン様酵素の活性化が関与している可能性を推察させるものであり、その原因の一つとしてα_2-プラスミンインヒビター様の生理的阻害物質の低下も考えられる。また、その分子的本体を明確にするには至らなかったものの、C型肝炎患者血清中のいわゆるクリオグロプリンのみでは説明できない固有の高分子量物質が、CAの原因物質の1つとなっていることが示唆された。
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