クラミジア・ニュモニエ感染が、動脈硬化の発症・進展に関与している可能性については多くの報告がある。動脈硬化の発症・進展に強く関与している高血圧に、クラミジア・ニュモニエ感染が如何に関与しているかについて、臨床的に検討した。高血圧の治療歴のない112人ならびに高血圧治療中の117人を対象に、クラミジア・ニュモニエの既感染の指標として血清IgG抗体を、再感染の指標として血清IgA抗体をELISA法を用いて測定し、比較検討した。高血圧未治療群112人では、IgA抗体陽性率は正常血圧群、境界域高血圧群に比べて、高血圧群で低値であった。また、クラミジア・ニュモニエの持続感染を示すIgA・IgG抗体ともに陽性の頻度は正常血圧群に比して高血圧群で低値であった。血清IgAレベルは、収縮期血圧、拡張期血圧と逆相関していた。高血圧治療を受けている117人では、IgA抗体陽性率はコントロール良好群に比べて、コントロール不良群で低値であった。IgA・IgG抗体ともに陽性の頻度は、コントロール良好・普通群に比べてコントロール不良群で低値であった。血清IgAレベルは、収縮期血圧、拡張期血圧と逆相関していた。対象全例において、IgA・IgG抗体ともに陽性の頻度は収縮期、拡張期血圧と負に関連していた(logistic analysis)。以上より、クラミジア・ニュモニエ感染は、日本人の血圧とは負に関連しており、高血圧の存在がクラミジア・ニュモニエ感染を抑制している可能性がある。
|