研究概要 |
特別養護老人ホーム内でのMRSAの生息状況の実態把握を目的として入所者の保菌状況を1994-95年にわたって調査した。検出されたMRSAのgenotypingはパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)を用い、相似係数に基づくRFLP解析を試みた。すなわち最も多く検出されたDNA切断パターンをdominant patternとし,各株の切断パターンとdominant patternとの相同性を相似係数(CS値);Coefficient of Similarity=(共通する切断片数×2/全切断片数)×100;を用いて表し,これを表現される遺伝子変異の頻度を型別の根拠とした。切断パターンに反映される遺伝子変異は,1回の独立した変異が1〜3本の切断片サイズの変化をもたらすことから,4本以上の切断片の大きさが異なる場合はminor type,3本以内の変化はmajor type内のsubtypeとして分類した。同時に生物学的性状と薬剤感受性パターンによるphenotypingを行った。生物学的性状試験は、コアグラーゼ型別,TSST-1産生能,エンテロトキシン型別を行い、薬剤感受性パターンは,感受性に違いが認められた5薬剤cefmetazole(CMZ),imipenem(IPM),gentamicin(GM),clindamycin(CLDM),minocycline(MINO)について検討した。 その結果、保菌率は94年18.2%、95年13.3%であり、phenotypeで6タイプ,genotypeでは4つのsubtypeを含めて7タイプに分かれた。genotypeからは保菌者の動向と関連する特定型の伝播や消退,外来株の侵入等に関する情報が得られた。phenotypeを組み合わせることで将来の除菌の可否の予測を含めたより有効な情報が期待された。また、genotypingに関して,相似係数を用いたRFLP解析法は妥当な型別判定法であると考えられた。
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